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タカシの外資系物語

外資と“イクメン” (その 2 )2011.02.01

自治体首長の育休取得

前回の続き) 積極的に育児に参加する男性を意味する「イクメン」。日本社会においても、育休(育児休暇)を促進する制度やプログラムを実践する企業が、徐々に増えてきました。しかし ! 現実には、一般サラリーマンにとっては、まだまだ、ごく一部のマイナーな活動である感は拭えず。男性の育児参画が一般的になるには遠い状況です。では、いったい何が阻害要因なのでしょうか・・・ ?


「首長の育休 是か非か!」


昨年 10 月、読売新聞の一面に、このような見出しが躍りました(2010 年 10 月 27 日付 読売新聞夕刊)。この記事は、広島県知事である湯崎氏が、 10 月 26 日から 1 ヶ月の予定で育児休暇を取得すると発表したことに端を発したものなのですが、実は湯崎氏以外にも、自治体首長の「育休取得宣言」が相次いでいるという背景がありました(東京都文京区長、茨城県龍ヶ崎市長、大阪府箕面市長などが育休を取得)。


上記の自治体首長は、自らが育休取得を率先して実践することで、「育休取得の機運を醸成したい」「妻の負担を軽減したい」という思いを述べていました。これに対し、有権者からは「民間では取得できないのに、首長は特別か」などの否定的な意見も寄せられているようです。このような意見は、同業の自治体首長からもあったようで、例えば、大阪府知事の橋下氏は、「世間を知らなすぎる」「公務員や首長は最後に取得すべきだ」というコメントを寄せたとのこと。

 

もちろん、肯定的な意見も相応に寄せられているのでしょうが、記事を読んだ印象としては、否定的な意見の方が多い印象を受けます。やはり、「男性の育休取得」というのは、依然としてマイナーな存在であるいうことを再認識した次第です。


さて、自治体首長の育休取得、みなさんはどのようにお考えでしょうか ? 私はこう考えます。まず、育休を取得できる制度がある以上、取得すること自体は構わない。それが首長であっても、一般職員であっても、この点で差別されるのはおかしいでしょう。


問題は、その目的にあると思うのです。「妻の負担を軽減したい」・・・ま、これはいいでしょう。しかし、「育休取得の機運を醸成したい」・・・については、どうか? 自治体トップである首長が育休をとることによって、本当にそのような機運が高まるのでしょうか。私はこの点が、若干疑問なのです。

育休が取れない最大の理由は?

もう少し、身近な例で考えてみましょう。例えば、「定時退社」について。みなさんの会社でも、週に1回程度、“早帰りデー” が設定される等、定時退社が推奨されていると思います。推奨されているものの・・・ 実態はどうか。仕事が定時に終わらずに帰りたくても帰れない状況ならいざ知らず、仕事が定時に終わっているにもかかわず、退社できないケースも多々あるのではないでしょうかね。なぜか? それは、「上司や先輩が帰らない」からです。私も日系企業に数年間勤めましたが、職場で机をつき合わせている上司や先輩が仕事を続ける中で、能天気に「お先に失礼しまーす!」と言い放って帰るのは、それはもう至難の業。本来ならば、定時になれば他人に気兼ねなく、自分の裁量で帰ってしまえばいいのですが、実際にはそうはいかんもんです。同じようなことは、みなさんも実体験としてお持ちなのではないでしょうか。

 

定時に帰れない理由、それは「上司や先輩が帰らない」からであって、「社長や役員が帰らない」からではない。経営トップが率先して定時退社しても、それに続く部長・課長・係長・・・といった現場の管理職が帰らなければ、一般社員は帰れないわけです。この構造は、育休取得にも当てはまるのではないでしょうか?


「育休取得の機運を醸成したい」ならば、それを阻害する要因を特定して、その排除に努める方が先決なのです。「首長である俺が育休をとったんだから、それにならって、みんな取得するはず・・・」ではない。本当に育休を定着させたいなら、現場にムーブメントを起こしたいなら、首長より先に現場管理職に育休を取得させるべきではないでしょうか。このような私の意見は、どちらかというと橋下大阪府知事に近いのですが、私は育休取得そのものには前向きなので、その点はちょっと違います。


(その他、「首長の育休取得は危機管理上、問題あり」という否定的なコメントもあるのですが、そんなこと言い出したら、首長は一切休みが取れなくなってしまいます。携帯電話が発達したこのご時世、どこにいても会話はできるわけで、首長に高い危機管理意識さえあれば、この問題はあまり該当しないように思います)

忙しくても、「イクメン」になれる ?

さてさて、「育休」という制度はできたものの、現実には、なかなか取得しにくい。となると、われわれ日本のサラリーマンが「イクメン」になるためには、どのような手段がありえるのか?

1 つの考えとして、子供に直接接することだけが育児ではないという発想も重要だと思います。日本の父親における最大の問題は、仕事にかまけて、家庭を一切顧みず、育児や家事の全てを母親に任せっきりにすることにあります。母親の切なる願いは、「夫婦で半々の分担とは言わないから、せめて 1 割でも育児や家事を気にかけてほしい」ということではないでしょうか。まずは、少しでもいいから、主体的に関与してみる、これが何より重要なのです。


アメリカ人の同僚 B さんは、超多忙なプロジェクトの PM をやっているため、平日は子供とほとんど会話ができません。ならば、と、Bさんはホワイトボードを使って、子供とコミュニケーションをする方法を開発しました。「お父さん、お帰りなさい。今日は学校で、こんなことがあったんだよ・・・」「ただいま。それは、面白い体験をしたね。休日に詳しく教えてね・・・」 常に子供と接点を持ち続けることによって、精神的な支えとなる。これも、立派な「イクメン」ではないでしょうかね。


あと、前回のコラムにも書きましたが、日本企業は、もっと職場に家族を引き込むような取り組みをしてもいいように思います。例えば、外資系企業の場合は、土曜に「チャリティマラソン(参加費 1,000 円程度を寄付する)」「グリーンディ(山に苗木を植える)」「クリーンディ(公園のゴミを拾う)」などの催しを頻繁に行います。その際に、ほとんどの社員は、自分の家族と一緒に、ピクニック気分で楽しみながら苗木を植えたり、ゴミを拾ったりします。これならば、ボランティアと同時に、「イクメン」も実践できるわけで、まさに一石二鳥。


一部の日系企業も同様も取り組みをしている例を見かけますが、そこには家族と一緒に楽しむという要素は薄く、あくまでも仕事の一環として捉えられているケースが多いように思います。休日のボランティアなのですから、普段の仕事とは違う気分で、もっと楽しめばいい。作業を脱線して、子供と走り回ったっていいじゃないですか。


日本の「イクメン」が実践すべきこと、それはまず、「短時間でも、間接的でもいいから、とにかく子供と接すること」 そして 「心から楽しむこと」 だと思うのですが、みなさんは、いかがでしょうかね。娘の寝顔を見ながら、そんなことを考えてみました。では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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