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タカシの外資系物語

昇進したくない症候群 ? -女性のワーク=ライフ志向- ( その 1 )2012.01.10

年末人事異動の目玉は ?

みなさん、新年明けましておめでとうございます ! 2012 年、『タカシの外資系物語』は連載 12 年目に突入しました。今年もよろしくお願いいたします !


年末のコラムでもお話した通り、外資では大きな人事異動を 1 月 1 日付で実施します。日系企業では、役員クラスの人事異動は 6 月の株主総会前後だとか、一般社員は 2 月と 8 月だとか、年度に数回分けて行われるのが普通ですが、外資は基本的に年に 1 回きり。もちろん、成果の上がらない場合は、年度の切れ目でなくても、それこそ月の途中であっても、いきなり人事異動が発令されるケース(要は、前任者のクビに伴う差替人事)はあるものの、定例の人事異動は、役員・一般社員に関わらず “年に 1 回” と決まっています。

 

人事異動を年度の切れ目に 1 回だけ行う理由はいくつかありますが、最大のメリットは、「当該年度の収益を個人に紐付けやすいから」だと思います。つまり、「 1 月 1 日から丸まる 1 年間担当したのであるから、今年の数字は、全てアナタの責任だ ! 」と言い切るためにやっている。確かに、このルールはわかりやすい。一方で、今年上がるであろう収益の過半は、前年までにいかに効果的な仕込み・種まきをしたか、つまり、前任者の頑張りに依存する(もちろん、逆のケース=前任者が何もしなかった・・・ もある)わけで、異動後の成果なんて、“運” 次第といえなくもありません。加えて、外資における役員の異動サイクルは 1 ~ 2 年ですので、中には、前任者の成果だけを頼りに出世街道を突き進むような、“運” のみの輩も存在します。ま、“運” も “実力” のうち、というのは外資のみならず、ビジネス社会の常識ですが・・・

 

さて、わが社でも年末に、大規模な組織変更を伴う人事異動がありました。特に役員人事は、その半数が入れ替わるという極めてドラスティックなもの。その目玉は、 30 代の若手(男)と 2 名の女性をパートナー(役員)に登用したことでしょう(ここでは、 30 代半ばの若手(男)= A 太郎、 2 名の女性をそれぞれ B 子、 C 子とします)。
私は、この 3 名を非常によく知っています。というのも、この 3 名とは海外の研修で一緒になったことがあり、それ以来、非常に仲良くしていたのです。 A 太郎は、早くから若手のホープとして将来を嘱望されていたのですが、正直、この若さでパートナーに昇進するとはビックリ ! 会社の若手登用プログラムにうまく乗った形です。こういうのも、“運” なんですよねぇ・・・。 5 年前なら、「ちょっと若いな。もう 1 年経験させるか・・・」てな感じで、却下されていた可能性が高いように思います。

 

 

キングメーカー タカシ ?!

B 子、 C 子も、女性登用プログラムにうまく乗った形です。もちろん、従来からわが社では、男女で昇進に差をつけていたわけではないのですが、女性が一度に 2 名もパートナーに昇進するケースはありませんでした。会社としては、同時昇進させることで、この2名を競わせようとしているのでしょう。と同時に、女性社員にとっては、一度に 2 名の女性役員が誕生したわけで、「自分も頑張れば、B 子さんや C 子さんのようになれる ! 」という感じで、モチベーションも上がるってもんでしょう。

 

さて、実は私、 A 太郎・ B 子・ C 子をパートナー候補とするにあたり、 3 名から「推薦文」を書いてくれるように依頼を受けました。わが社ではパートナー昇進に際し、 5 名のパートナーから「推薦文」を集めなければなりません(なんか、政党の代表選挙みたいですが・・・)。この推薦文を、「Soundings(=“(秘密裏に行われる)調査・打診”という意味)」と呼んでいます。“(秘密裏に行われる)調査・打診”の割には、候補者本人に明かされていて、その本人に選ばせるというのはいかがなもんか、という気もしますが・・・。なんか、主旨ズレてるし・・・。

 

基本は、自分の直属の上司や、以前世話になった上司にお願いするのですが、 5 名集めるのって結構難しいんですよね、これが。英語で膨大な項目に回答しないといけないので、お願いするのも気が引けるし・・・。ということで、この 3 名は、“お願いしやすさ” という観点から、私に Soundings を依頼してきたというわけです(おそらく)。

 

「人を育てる」というのは私のライフワークですから、私は快く引き受けました。ちなみに、この 3 名は、お互い示し合わせて私に依頼してきたわけではありません。そもそも、推薦者が重なるっていうのは、会社としては、できれば避けたい事態ですから。私とて、こんな末席のパートナーが偉そうに複数名の Soundings を書くなんてやりたくなかったのですが、お願いされたものは仕方ありません。ま、個人的には、「プチ・キングメーカー」みたいな感じで、悪い気はしませんけどね、ガハハ・・・(と、調子に乗るタカシ・・・)

彼女が出世“すべき”理由

Soundings を私に依頼するときの対応も、三者三様でした。

 

A 太郎 「タカシさん、うまく書いてくださいね。よろしくお願いしますよ、ホント ! 」
私 「あ、あぁ・・・(なんで、こんな高飛車に言われなきゃならんねん ! )」

 

B 子 「タカシさん、私にもやっとチャンスが回ってきました。絶対に成果を上げますので、よろしくお願いします ! 」
私 「OK ! (こうだろ普通・・・)」

 

C 子 「タカシさん、パートナー候補に選ばれてしまったんですけど・・・」
私 「お、良かったじゃん。頑張って ! (C 子も、Soundings の依頼だな・・・)」
C 子 「あのぅ、これって断れないんですかね ? 」
私 「OK ! ・・・ って、こ、“断る” ですとぉーーーーーーーーーーーー ! 」
C 子 「私、そんなに偉くなりたくないんですよ。家庭も大事にしたいし、親の看病もあるし・・・。パートナーになると、これまでとは比較にならないぐらい責任範囲も増えて、大変なんですよね、やっぱり・・・」
私 「うーーん、そうでもないけどね。僕みたいに、超いいかげんでも何とかなってるし・・・(って、なんでやねん ! )」
C 子 「タカシさん・・・、そもそも、私がパートナーに昇進することの “意義” って、何なんでしょうね ? 」
私 「それは、社員みんな、特に女性社員の “ロールモデル” になる、ということじゃないかな ? うちの会社だって、全員が出世命のキャリア志向の人ばかりじゃない。C 子のように、家庭も大事したい、親の看病が必要だ、って人もいると思うんだ。経営陣としては、そんな人にも気持ちよく働いてもらいたいんだろうし、あなたがその先駆者としてパートナーになれば、いろいろ変わっていくと思うけどね・・・」

 

すんごくカッコいいこと言ってるでしょ ? でもこれって、某役員(アメリカ本社の Senior Vice President =上級副社長)の受け売りなんですよね。私もパートナーになった際、ある役員に同じことを聞いたんです(『パートナーに昇進して思うこと』参照)。

 

(回想-本社上級副社長との会話)
私 「どうして私のように MBA でもないヘナチョコをパートナーにしてくれたんですか ? 」
某役員 「タカシ、われわれ役員があなたに期待しているのは、あなたのようなヘナチョコ・・・、し、失礼・・・、あなたに  “普通”の人材におけるロールモデル を示して欲しいってことなんだ。コンサルティング会社のパートナーだからって、全員が東大卒で、全員が MBA というのはおかしいし、面白くないよね。そういうことだよ・・・」
私 「副社長 ! (T-T)・・・泣ける・・・」

 

私の話を聞いた C 子は、少し吹っ切れた感じで、次のように宣言しました。
C 子 「・・・タカシさん、女性社員の “ロールモデル” って、まさにそうですよね。そう考えると、やる気出てきますよね。私、頑張ってみようと思います。で、あのぅ・・・ Soundings の方、よろしくお願いします・・・」
私 「OK ! 」

 

仕事もできるし、常に上昇志向の B 子 と 仕事はできるが、出世は望んでいない C 子。できる女性にも様々なタイプがあります。ま、これは女性に限ったことではないですが、C 子のようなタイプは、女性に顕著だと思います。
次回のコラムでは、「上昇(出世)志向」 と 「ワークライフバランス」 という観点から、いくつかのタイプ分けを行うことで、現状の女性登用プログラムにおける問題点を抽出してみたいと思います。
(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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