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タカシの外資系物語

タカシ流ワーク・ライフ・バランスの実践 (その 2 ) 2010.11.02

残業禁止日に急な仕事 ! さて、どうするか・・・ ?

前回の続き) 前回のコラムでは、「外資流の働き方では、“残業は減る”が、“総労働時間は減らない”」というお話をしました。外資系企業では、夜遅くまで会社に残らない代わりに、早朝出勤や夜間に自宅で仕事をすることで、日系企業と同様の仕事量を稼いでいるということです。そうすることで、ワーク・ライフ・バランスを実践しているわけです。では、ワーク・ライフ・バランスというのは、単に仕事をする時間をズラせばいいのか・・・というと、それだけではない。では、一体何が必要なのでしょうか ?


ワーク・ライフ・バランスを実践する上で、必要不可欠な要素は、以下の 3 つだと思います。

(1) ルール と 支援の仕組み
(2) 職場の雰囲気
(3) 本人の意識と能力

 

まず、「(1) ルール と 支援の仕組み」からお話しましょう。 「ルールなんて、一方的に作ればそれで終わりじゃないのか ?! 」 ・・・なーんて考えは大間違い。“ルール”というのは、それを実現するために社員を支援する“仕組み”がなければ、うまくいかんのです。例を挙げてお話いたしましょう。


例えば、「夜 7 時以降の残業は禁止 ! 」というルールができたとします。ルールはルールですから、文字通りに解釈すれば、夜 7 時以降に会社に残って仕事はできないことになります。実際、日々の業務を要領よくこなせば、残業など必要ないでしょう。しかし、そうは問屋が卸さないケースも多々あります。例えば、クライアントから、「何とか今日中に契約書を間に合わせてくれないか ? 」なんていう無理なオーダーは、日常的に起こるわけです。さて、どうするか ?


こんな場合、多くの日系企業では、「残業例外申請」みたいなものを提出させることで対応します。「ルール上はNGだが、例外なのでOK」とする。その上で、何のお咎めもなく、残業ができる状況を作り出すわけです。読者のみなさんも、経験があるのではないでしょうか。

禁止ルールの例外、その転落の過程

しかし、この「例外」というのが超・曲者でして、大抵の場合、上記で述べたようなルールは失敗するのです。こんな感じで・・・


・ ルール設定当初、「残業例外申請は事前に申請すること!」と決定される
・ しかし、残業が必要かどうかなど、事前にわかるケースは少ない(その場になってみないとわからない)ため、「残業例外申請の申請は、緊急時には事後でもOK」といった、“例外”の“例外”を認めることになる
・ そうこうするうちにルールは形骸化し、必要に迫られなくても残業をする輩が頻発する。「おっ、もうこんな時間か・・・ 残業しちゃったけど、明日、残業申請出せばいいよな・・・」てな、感じ


・・・こうなってしまうと、「夜 7 時以降の残業は禁止!」という当初のルールは、もはや何の意味も効力もない。だれも守りゃしない ! なぜか ? それは、残業させないためのルール = 禁止のルール を作ることに躍起になり、それが破られそうになったら例外、例外・・・ でしのごうとするからです。


一般的に、禁止のルールというのは、遅かれ早かれ、だれかに破られる運命にあるものです。同じ状況で、「夜 7 時以降にPCにログインしていたらNG」というルールも、多くの企業で設定されています。しかし、それに対しても、「お、7 時を越えたぞ。席に戻って、PCからログアウトしなきゃ・・・ これ以降はネットワークから切り離して、スタンドアロンで仕事をしよう・・・」 なんてことが頻繁に起こる。


私が勤めていた日系銀行では、残業禁止の日にだれも残業していないことを確認するため、人事部が抜き打ちで電話をかけてくることがありました。夜間にその電話を取ろうもんなら、翌日、部長が呼び出されて怒られるわけです。私も、その“罠”にはまったことがありました。ある残業禁止日の夜9時ごろ、部内にかかってきた電話に出てみると、それは人事部からでした。


私 「あ、もしもし・・・ (やばっ!人事部の抜き打ちチェックだ!)」
人事部 「君はだれかね。今日は残業禁止日だぞ ! こんな時間まで、何をしているんだ ! (怒 ! )」
私 「あ、あのですね・・・ 定時に帰ったんですが・・・ ちょっと忘れ物をしまして、取りに来ただけです・・・」


小学生並みのウソです。支店に勤務していた私の同僚などは、人事部からの電話にテンパってしまい、突然鼻をつまんで、「お、お電話ありがとうございます。本日の営業は、しゅ、終了いたしました。御用の方は、ツーという音のあと、えーと、れ、れ、連絡先を・・・」 と留守電のアナウンスを始めてしまい、後日こっぴどく叱られたそうです。留守電のアナウンスが、詰まるかっての!

禁止のルールは最低限、例外は認めず !

これに対して、外資はどのような対応を取るか ? 一般的に、外資というのは、禁止のルールを必要以上に設定しません。また、“例外”を認めません。なぜなら、小手先の対応は、すぐに破られることを理解しているからです。
外資には、多様な価値観の人材が勤めています。その多様な価値観を、一律のルールで縛るというのは、そもそも無理があるのです。一方、日系企業は日本人という単一民族が勤めていることを前提にルールを決めます。あの人が悪いと思うことは、この人も悪いと思うはず・・・ という論理です。それでも、うまくルールが回っていればいいのでしょうが、上述の通り、抜け道を探すヤツが必ず出てくる。ならば、外資流のやり方を参考にすべきなのではないでしょうかね。


外資は、「夜 7 時以降、会社で残業はするな。しかし、会社以外なら仕事をしてもいい」という発想です(夜間に仕事をすることを奨励しているわけではなく、自己責任でやれば・・・ という考え方)。そのためには、会社以外でも仕事ができる仕組み、例えば、PCを社員全員に個人貸与したり、外部から社内ネットワークに入る環境を構築したりするわけです。もちろん、外部から社内ネットワークにアクセスする上では、強力なセキュリティが必要になりますが、それにも投資する。また、貸与したPCを紛失したら大ごとですが、「PC紛失したら、即解雇 ! 」といったルールを決めて運用するのです。そして、「会社以外でも仕事ができる環境」という上記の仕組みが、結果的に、ワーク・ライフ・バランスを実践する上で、不可欠な要素になっているわけです。


これは私見ですが、ワーク・ライフ・バランスを本当に実践するためには、かなりのIT投資が必要です。このことを理解せずに、単に掛け声だけで強制しようという、日系企業経営者の何と多いことか・・・ また、経営者だけでなく、仕組みが欠落していることを指摘しない社員も同罪だと思います。


次回のコラムでは、残りの要素である 「(2)職場の雰囲気」 「(3)本人の意識と能力」 についてお話しましょう。
(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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