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タカシの外資系物語

タカシ流ワーク・ライフ・バランスの実践 (その 1 ) 2010.10.26

「残業解禁!」 の記事から見えてくるもの

少し前の話になりますが、新聞に以下のような記事が出ていました。

 

トヨタ自動車が残業解禁!
「トヨタ自動車が、ベテランや中堅社員が若手を指導できるよう、2009年5月まで上限を1カ月10時間、同年6月以降は原則禁止としていた事務・管理部門の残業の制限を撤廃した」(出所:2010年9月25日、日本経済新聞1面より)


要は、リーマンショック以降の不景気で、原則禁止されていた残業が復活した・・・ という話。日本のリーディングカンパニーであるトヨタがこのような動きに出たということで、産業界全体も同調する可能性が高いと思われます。


さて、実はこの記事には、上記以外にいくつかの重要なポイントが含まれています。まず、「ベテランや中堅社員が若手を指導できるよう・・・」という部分。厳密に読むと、トヨタが残業として許可したのは、「若手を指導する時間」であって、「自分の仕事をする時間」ではない! ということです。もちろん、両者を明確に区分することは、実務上困難な部分もありますから、あくまでも目安ということになろうかと思いますが、残業に対する経営の考えが端的に示されていると思います。


それともう1つ、「残業解禁」の “解禁” というコトバそのもの。“解禁”の文字通りの意味は、「禁止していたことを解くこと」なのですが、このコトバには、「待ち望んでいたもの」「待ってました!」 みたいなニュアンスを含むように思うのです。「アユ解禁」とか、「ボジョレーヌーボー解禁」とか、いずれもそんなニュアンスですよね。つまり、「長らく待ち望んでいた残業が、やっとできるようになった!」という感じを受けるのです。


以上を整理してみましょう。これはあくまでも個人的な見解ですが、私が冒頭の記事から読み取った内容は、次の通りとなります。


「これまで残業が制限されていたため、若手を指導したくても十分にできなかったが、残業が解禁されたため、心置きなく若手の指導ができる! うれしーーーーーーーー!」


ふーーむ、言わんとしていることはわかるのですが、なんか優等生っぽい回答。ホントにそれだけなのか? 解決しなければならない課題はもっと他にもあるのだけれど、それを避けているというか、その本質を突いていない印象がしませんかね? 

外資系社員も長時間労働?

課題の本質を見る前に、まずは、外資系企業における “残業”の現状 をまとめておきましょう(以下、ほとんど全て、私の個人的な見解ですが・・・)。

 

(1) 外資では、“残業”は時間内・期限内に仕事をこなせないことを意味するため、残業する人 = 優秀でない という見方をされる傾向がある
(2) 実際に、“残業している社員の数”は、同業種の日系企業と比較しても、格段に少ない(ただし、中には残業をしている人もいます。皆無というわけではない)。
(3) 一方で、外資系社員の“仕事量”が日系社員のそれより格段に少ないというわけではない。例えば、早朝に出社したり、夜間・休日に自宅で仕事をしたりする割合は、むしろ日系企業よりも多い。特に、上位層は朝7時には出社している人が大半。


これまでも繰り返し述べてきたことなのですが、私の印象では、外資系社員もそれなりに長時間働いています。ただ、会社で、夜、残業しないだけなのです。この前提を理解せずに欧米流の働き方を比較検討しても、ろくな議論にならない。


例えば、「ワーク・ライフ・バランス」について考えてみましょう。ワーク・ライフ・バランスというと、日本ではもっぱら、「仕事を定時に切り上げて、早く帰宅する」 ことで、「家族との触れ合い・地域への貢献・趣味等に時間を使う」 ようにしましょう! という文脈で理解されがちです。しかし、本当にそれだけなのでしょうか?


もちろん、仕事が定時に終えられるのなら、その方がいいに決まっています。帰宅時間が無理やり設定されることで、これまでダラダラやっていた部分が効率的に改善される部分もあるでしょう。しかしですよ! つい先日まで、多少の無駄はあったとしても、それなりに一生懸命やって夜の9時までかかっていた仕事が、ワーク・ライフ・バランスが導入された途端、急に5時半に終わるようになるなんてことがありえるでしょうか? 気合と根性だけで、仕事が3時間以上も短縮できるなんて考えにくいし、仮にそうだとしたら、それまでどれだけダラダラと非効率に仕事をしていたのか、一体何をしとったんじゃ! ということになります。


このように、日本型ワーク・ライフ・バランスにおける最大の問題点は、“働き方”を一切変えずに、以前より短時間で、同じアウトプットを求めるところにあります。つまり、単に「早くやれ!」と言っているだけ。実際には、仕事の効率化以前の問題として、働き方そのものを変えなければ、ワーク・ライフ・バランスなど絵に描いた餅に終わってしまう可能性が高いのです。

 

ワーク・ライフ・バランスの “大前提”

では、残業をなくし、ワーク・ライフ・バランスを実現するための“働き方”とは、どのようなものなのか? 詳細な説明に入る前に、大前提をお話します。それは、上記にも述べたとおり、「仕事量は、劇的(例えば、半減とか)には変わらない! 自然に減ったりしない! 」ということです。仕事を片付けるには、自分でやるか、他人に振るか、やめちゃうしかない。他人に振ったり、やめたりすることができないのなら、結局、自分でやりくりしてこなすしかないのです。
ワーク・ライフ・バランスというのは、あくまでも “バランス” の話をしているのであって、ワークを減らすという議論ではない。日本人の“働き方”はバランスの観点からよろしくないので、是正しよう、という取り組みなのです。具体的には、以下のような変革を促しているのです。

 

<1> 日本人ビジネスパーソンの典型的な“働き方” ・・・ バランス、超・悪し!

7時起床 → 8時自宅出る、猛烈な通勤ラッシュでフラフラ~ → 定時まで仕事 → 21:00まで残業 → 自宅に帰ったら寝るだけ、24時就寝


<2> ワーク・ライフ・バランスを実現した“働き方” ・・・ バランスがいい! ただし、労働時間が減っているわけではない。

5時起床 → 6時自宅出る、電車も座れる → 7時から仕事開始 → 定時まで仕事し、退社 → 自宅に帰って、家族団らん。趣味もやったりする → 22時から再度仕事 → 24時就寝


“バランス”という観点では、やはり②の方に分があるでしょう。また、朝のラッシュを避けているところもポイントですね。個人的にも、②の方が長生きできるような気がします・・・
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さて、<2>の“働き方”を実現するためには、気合と根性だけではどうにもなりません。では、何が必要なのか・・・? 次回、詳しくお話したいと思います。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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