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タカシの外資系物語

タカシ、ホテルを語る (その 2 ) - 損害賠償で訴えられる ?! -2010.10.12

モスラの鱗粉の大きさは ?

前回の続き) 国内外問わず、出張の楽しみの1つに「ホテルライフ」が挙げられます。読者のみなさんも、様々なこだわりでホテルを選んでらっしゃることだと思います。そんな楽しいはずのホテルライフなのですが、実は私、米国出張時に “訴訟騒ぎ” に巻き込まれたことがあるんです・・・


ロサンゼルス空港内にある、某ホテルに着いた私。今回の出張目的は、あるソフトウェアの研修を受けること。とりあえず出席だけしておけば何とかなる「なんちゃって研修」とは違って、しっかりと理解しなければ、日本のお客様に対する提案活動ができなくなるわけで、実はかなり緊張していました。


緊張をほぐすには? そう、“お風呂” でしょう。私は部屋に到着するやいなや、バスタブにお湯をはるべく、蛇口をひねりました。洋風の底の浅いバスタブ・・・ アメリカに来たなぁ、って感じですよね、ワクワク!


さて、次に私がしたことは何か? それは「インターネットの接続確認」です。海外出張時は、メールがつながるか否かということが、仕事上はもちろん、プライベートでも生命線となります。何かあったとき、国際電話ばかりかけるわけにはいきませんからね。

 

10年以上前なら、外資系企業を含む多くの企業では、海外出張時の「Safety Call (家族に「無事着いたよ!」と連絡するための国際電話)」の料金は、経費として認められていました。しかし最近では、メールさえ使えればSafety Callはできるので、廃止する企業も出てきたとのこと。ま、実際に本人の声を聞くのと文字連絡では、かなり趣が違いますがね。


「お、うまくつながったようだぞ! まずはトモミに連絡しておこう・・・」


まずは、無事ホテルに到着したことを伝えて、戻ったらどこに遊びに行こうかなど、他愛ないやりとりをしていました(確かに、こんな会話をメールではなく電話でしていたら、とんでもないことになります)。


そのうち、ふとしたことから、「モスラ(ゴジラに出てくる蝶の怪獣) の 鱗粉(羽の粉) は、どれぐらいの大きさか?」という話題になりました。


トモミ 「ピンポン玉ぐらいあるんじゃないの?」


私 「そんなデカいわけないじゃない! パチンコ玉程度だと思うよ」


・・・どっちでもいいし! はるかロサンゼルスまで来て、それもメール経由で、一体何を話しているのか・・・? と、突然、ホテルの部屋を乱暴にノックする音が!


「Hey, you ! Bus-tub・・・ water’s running over ! (おい、あんた! 風呂の水があふれてるぞ!)


エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!(T-T)

タカシ、訴訟社会アメリカで戦う ?!

見ると、バスルームから入り口にかけて、水浸し ! というか、水たまり ! 水はドアの外、廊下にまで流れ込んでいるではありませんか ! 私は急いで、トモミにメールで相談しました。えっ ?  そんなことしてる暇があったら、早く蛇口閉めて、ドア開けろって ?  動揺していたんでしょうな、実際・・・ ここでも、私の “小男ぶり” が遺憾なく発揮されたということで・・・

 

私 「・・・ということなんだ、ど、どうしよう・・・(T-T)」


トモミ 「ホテルのバスタブがあふれて、損害賠償を請求されたって、典型的なパターンよね・・・ 以前聞いた話だと、数千ドルぼったくられるケースもあるみたいよ」


私 「ええっ・・・(T-T)(T-T)(泣き崩れる・・・)、ご、ごめん・・・」


トモミ 「泣いている場合じゃないわ、戦うのよ! あなただって一応、外資のコンサルでしょ ?  堂々と胸を張って、頑張って ! 日本で健闘を祈ってるわ ! 」


エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!(T-T) 


トモミが一緒にいれば、彼女の英語力に頼っていたことでしょう。しかし、ここははるか異国の地ロサンゼルス、そして私ひとり・・・ 泣いている場合ではありません。私はお笑いコンビ、オードリーの春日並みに胸をはって、ドアを開けました。


(※以下、当然のことながら、実際の会話は英語でなされたわけですが、実は何を話したかよく覚えておらず、また相手の会話内容も想像の域を出ないため、日本語で記載いたします)


私 「どうしました ?  (って、実は心臓バックバク ! )」
ホテルの従業員 「どうしたもこうしたもないだろ ! 水があふれてるじゃないか ! 」
私 「そのようだな・・・ 私も驚いているんだ・・・ (って、落ち着いてる場合か ! ちなみに、“I’m surprised, too.” と言ったように記憶しています・・・)」
ホテルの従業員、さすがに「ダメだ、こりゃ・・・」的な表情をして、マネージャーとおぼしきスーツ姿の人を連れてきました。


マネージャー 「困りましたね・・・ これじゃ、カーペットが使い物にならないなぁ・・・ 損害賠償を請求する可能性がありますよ ! (※よく聞き取れなかったのだが、carpet=カーペット、damage=破損・損害、claim=請求 という単語だけはわかったので、多分そういうことだと思う・・・)
私 「(うぬぬ・・・ やはり、そう来たか。ここで屈するわけにはいかん ! ) それはおかしいな、フハハ ! 」
マネージャー&従業員 「なぬ ?! 」

タカシが起こした “ロスの奇跡”

私 「日本では、バスタブからお湯があふれないように、ギリギリのところで排水されるようなバルブが付いておる。私は、このホテルのバスタブにもそれが付いていると思い込んで、気を許したのだ ! 」


マネージャー & 従業員 「なんだと ?! 」


私が主張したのは以下の通り。

(1) 私は、日出ずる国、日本からやってきた (アホか・・・)
(2) 日本では、バスタブからお湯があふれないように排水するバルブが、ほぼ 100 % 付いている。これがないと、お湯を張っている間中、ずっと見張っていなくてはならないため、非合理だ。そして、この仕組みはグローバルスタンダードなはずだ (ホントか?)
(3) アメリカはグローバルスタンダードな国のはずだ。ということは、その仕組みを備えていない、このホテルが悪い (無茶苦茶や・・・)


ものすごい三段論法です。3歳になるうちの娘も、ときどきおもちゃ売り場でダダをこねますが、その比ではありません。この主張を英語で、かつ、緊張のあまり涙を流しながら話したわけです。


マネージャー 「W、wait a minute, please ・・・」


しばらくすると、かなりシニアなおっさんがやってきて、私に挨拶してくれました。General Manager(GM:支配人でしょう)とのこと。そのGMは私に丁重にお詫びをして、こう言いました。


支配人 「このたびは本当に失礼いたしました。この部屋をお使いいただくわけにいきませんので、上層階の広いお部屋を準備します。荷物の移動は、ポーターにお申し付けください・・・」
私 「えっ?」


にゃ、にゃんとねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ !
損害賠償されるどころか、部屋をグレードアップしてくれるとはーーーーーーーーーーーっ !!
トモミ、やったぞ! わしは、勝ったんやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ !!!(T-T)(T-T)(T-T)


まさに “奇跡” でした。しかし、冷静に考えてみると、オードリーの春日並みに胸を張った小男が、涙をボロボロ流しながら、片言の英語で、わけのわからないことを話しているわけです。新種の過激派か何かと勘違いしたのかもしれません・・・

 

みなさんも、モスラの鱗粉に気を取られていると、ろくなことになりませんからご注意を ! (って、だれもモスラの鱗粉など、気にせんってか ? )


さて、タカシの海外ホテルとんでもエピソード、これで終わりだと思うでしょ ? いやいや、まだまだ・・・ 実は、今回の話をさらに上回るエピソードが、もう1つ。題して、「タカシ、ロンドンで “保護” される ?! 」 次回、請うご期待!
(次回まだまだ続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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