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タカシの外資系物語

「悪いところ」をなくすために ( その 1 )2010.08.31

あるスポーツ新聞の記事に・・・

前々回、前回と 2 回にわたり、連載 500 回記念 および パートナー(役員)に昇進したお話を差し上げました。また、掲載元のダイジョブ社のご担当にも配慮いただきまして、webサイトに 「タカシに送ろう !! みんなのお祝いメッセージ」という企画を設定してもらいました。先日、いただいたメッセージを拝見したのですが、みなさまからの心温まるコメントに、涙・涙・涙・・・(T-T) いやぁ、本当にありがとうございました。


そんな「新生:タカシ」の外資系コラム、まずは、みなさんにある“格言”を紹介したいと思います。先日のこと、スポーツ新聞のプロ野球コーナーを読んでいると、こんな文章が目に飛び込んできました。


「・・・ 2 軍は加点法。良いところを伸ばしていこう、となる。 1 軍は減点法です。席が決まっているから、ミスしたら、力がなかったら、落とされる。 1 軍に定着するためには、良いところだけじゃなく、悪いところも消していかなければならない。良いところは伸ばして、悪いところは削っていかないと、定着はできないと思います・・・」 (スポーツ報知 2010 年 8 月 10 日 『岡崎 2 軍監督 Gっくり語る』 より抜粋)


いやぁ、この言葉には衝撃を受けました。それも、情報源がビジネス書や有名人の講演会とかじゃなく、“スポーツ新聞”ってところがシブいでしょ? スポーツ新聞だって、バカにしたもんじゃありません(っていうか、私自身、スポーツ新聞からかなりの情報を得ていたりするのです)。


どうしてこの言葉に衝撃を受けたのか? それは、この言葉が文字通り、「そうだ、そうだ!」と深く納得できるものだったのと同時に、この 5 年ほどの間、私が仕事を取り組む上で留意してきたことが、まさにこの「悪いところを削る」ということだったからです。そして、私が外資系企業をクビにならず、マネージャーからパートナーに昇進できた理由があるとすれば、これがまさにその理由に違いないからなのです。


では、私がなくそうと努力してきた、「悪いところ」とは何なのでしょう?

「私と同じスペックの人間を連れてきてください!」

実は私、今でこそカドが取れて、温厚なおっさん風情(最近、腹も出てきた・・・(T-T))なのですが、若いころは手がつけられないくらい生意気なガキでした。何が生意気なのか? それは、他人を一切認めようとしなかったという点です。
若いころはだれでもそうだと思うのですが、一通りの経験を積んで、自分の仕事にそれなりの自信が出てくると、途端に横柄になる。「この仕事を一番うまくできるのは、俺なのだ。俺こそが、この部門(会社)を回しているのだ!」といった、偏った思い込み。


それを裏付けるエピソードとして、こんなことがあります。ある日、当時の上司が私のところにやってきて、こんな提案をしてくれたのです。
上司 「いやぁ、最近のタカシくんの活躍ぶりは目覚しいねぇ・・・ 毎日、目が回るほど、忙しいんだろ?」
私 「(けっ!見ればわかるだろ。このクソ忙しいときに・・・) 何か用っすか?」
上司 「いやね、仕事も増えてきたことだし、タカシくんを補佐する意味でも、若手を新規に3人程度入れようと思ってるんだけど・・・ どんな若手がいいかな?」
私 「そうすね・・・ 3 人もいらないんで、私と全く同じスペックの人間を 1 人連れてきてください。そうすれば、 2 倍働けるし、すぐに業績を 2 倍にしてみせますよ!」
上司 「・・・」


今考えても、はずかしい! よくもまぁ、こんなアホな発言ができるのか、本当に呆れてしまいます。「私と全く同じスペックの人間」なんてこの世にいないわけでして、そんなことを言っている段階で、かなりのアホですな。まぁ、それを差し引いても、私の発言がアホな点、つまり私が認識して、即改善すべき「悪いところ」は、大きくいうと3つありました。

(1) 過度な自信過剰
(2) 仕事は1人でやるのではなく、チームでやる ということを理解していないこと
(3) 人材を育てることの重要性 を理解していないこと

「過度な自信過剰」は禁物!

自分の仕事に自信を持つということは重要です。そもそも、自信がなければ、お客様に提案などできない。自信のない商品やサービスを、お客様に売りつけるわけにはいきません。また、新入社員が一皮剥けて、会社の戦力になっていく過程で、仕事に対する“自信”というのは必要不可欠な要素でもあります。


しかしその自信が、“過度な自信過剰”になると、ろくなことになりません。これは、 2 つの点において良くない。 1 つは、上記(2)にも関連しますが、チームワークを乱します。態度が横柄になって、他人に配慮しない。そういう仕事のやり方では、早晩破綻します。
そしてもう 1 つ、私はこのことが非常に深刻だと思っているのですが、自信が過剰に過ぎると、人間というのはそれ以上伸びなくなってしまうのです。上記例で私は、「この仕事を一番うまくできるのは、俺なのだ」と言っています。しかし、これはある意味で当たり前のことなのです。なぜなら、その仕事に取り組んでいるのは自分自身しかいないのであって、他人よりうまくできるも何もないからです。例えて言うなら、 100 m走のトラックを 1 人で走っているようなもので、競争も何もない状態において、「いやぁ、俺は速いなぁ・・・」と言っているようなものなのです。


若いころは、「いや、同じ営業でも俺はAよりも売り上げを伸ばした。俺の方がデキる!」と思いがちです。しかし、Aさんの立場に立って、Aさんのクライアントに対しても、同じパフォーマンスを上げることができるかどうか・・・ それは未知数なのです。たまたま自分が楽なクライアントを受け持ったかもしれないし、逆に、Aさんのクライアントに大きな問題があるかもしれない。仕事には、業績という“数字”では判断できない要素があるわけで、同じ比較はすべきではない。つまり、「俺はAさんよりも、だれよりも仕事ができる」か否かというのは、同じトラックを走っていない以上、だれにも評価できないことのはずなのです。


ここで、「俺はこのクライアントでは成果を上げることができたが、Aさんのクライアントではどうだかわからない。また、他の仕事なら、まだまだ半人前だ・・・」という意識が持てるかどうか。これこそが、その人が成長できるモチベーションの源泉となります。自信過剰で現状に満足してしまうか、自信は持ちつつも、他の領域を求めて好奇心旺盛に自分の幅を広げるのか、それが成長の分かれ目になると思います。


幸いにも、私の場合は、自信を持ちかけたところに、自分よりずっと優秀な同僚がやってきたり、部門を変更させられたりして、自信過剰でいる期間が短くて済みました。そのおかげか、仕事が安定した今になっても、自信過剰で安穏としているわけでなく、「これではいけない、もっと経験を積まないとやっていけない・・・」という意識を持って、仕事に取り組むことができています。


次回のコラムでは、残り(2)(3)について、実際の経験談をもとにお話したいと思います。
(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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