グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

God is in the details ! ( その 2 )2009.09.08

タカシも 「新人類」 だった ・・・

前回の続き) 報告書の誤字脱字が多い若手に対して、「God is in the details !」(神は細部に宿る)という言葉で戒めたタカシ。それにしても、「最近の若い連中」は、どうして細部をおろそかにする傾向にあるのでしょうか ・・・ ?

>
前回のコラムで、私は「最近の若い連中 ・・・ 」というフレーズを使うのが嫌いだと書きました。実はこのことに関して、読者のみなさんから複数のお便りをいただきました。いただいた意見をご紹介すると ・・・
「私も “最近の若い連中は ・・・ ” とは、言いたくないが ・・・ でも、やっぱりヒドイ ! 」
「何度言ってもわからない。失敗しても、全然反省しない ! 」
「若手をどのように指導していいか、わからない ・・・ すごく悩んでいます ・・・(T-T)」 ・・・。
やはり、若手の指導・育成については、みなさん苦慮されているようです。


私が、「最近の若い連中 ・・・ 」というフレーズを使うのが嫌いな理由は、おそらく、いつの時代にも同様のことが言われているに違いないからです。言う側は、ほとんどの場合、自分を基準にして言っていますので、「若い連中」にとってはフェアではありません。「若い連中」の育ってきた背景や考え方を理解した上で、それでもなお、普遍的に修正すべき点があれば指摘・指導するのが道理でしょう(ま、頭ではわかっているのですが、これって結構難しいのはわかります、ハイ ・・・ )。


実は、私の若いころにも、同じようなことを言われていたように記憶しています。称して、「新人類」。この言葉は、1986年の流行語大賞にもなっています。
では、「新人類」とは何か ? 「自分勝手」「無感覚・無感動」などのマイナスイメージがある一方、「物怖じしない」「クヨクヨしない」などのプラスイメージもあったようです。で、「新人類」が社会人になって、日本経済を担うようになったわけですが、結局のところ、それ以前と比較して何か大きく変わったかというと、実はそんなには変わっていないように思います。もちろん、団塊の世代のように、経済が右肩上がりで成長した時期ではありませんし、バブルもはじけた後ですから、働き方自体も変わったのは確かですが、ヒトそのものがガラリと変わった感じはしない。「新人類」以前とほとんど同じではないかと思うのです。ということは、今の若い連中も時期が来れば、違和感なく社会に溶け込むのではないかという仮説も成り立ちます。

PC 世代は誤字脱字が多い !

「いやいや、そんなことは絶対ない ! 最近の若い連中は、私たちのころやその前の世代とは、全然違う ! 」 このようなお便りもいただきました。では、何が違うのか ? 
ここで、環境の違いを見てみましょう。例えば、「新人類」と呼ばれた私たちの世代と、その前の世代との、環境面での差異は何でしょう。それは、「生まれたときから TV があったかどうか」ということです。 TV 世代は、考え方が受動的で、支配欲が強く(チャンネルを独占できるので)、自分勝手。一方で、大衆参加番組などを見慣れているので、大勢の前でも物怖じしないというわけです。

 

では、最近の「若い連中」と、われわれとの差異は何でしょう ? それは、「生まれた(物心ついた)ときから PC (特に、インターネット)があったかどうか」ということではないかと思います。では、PC 世代 (=ネット世代) であることが、作業の仕方をどのように変えたのでしょうか ? 


PC 世代に誤字脱字が多いことは、論理的に想像がつきます。つまり、自分で文章を書かずに、変換ソフトに任せてしまうわけですから、同音異義語の意味をあまり考えずに、感覚的に文字を打つわけです。
過去 30 年ほどの間に、大学の入試はマークシート方式が主流になってきました。センター試験(私のころは、共通一次試験。古っ ! )も、漢字の書き取りはなく、もっぱら選択する方式の問題です。高校時代、国語のY先生という人がいまして、よく次のように言っていました。


「君たちが社会で働く頃には、漢字など書けなくてもいい時代が来る。意味を理解して、選択する能力が重視されるようになる ! 」とか言って、その先生は定期テストでも、漢字の書き取りは一切出さずに、選択する問題ばかり出していました。ま、今になって思うと、 Y 先生の「予言」は、ズバリ当たったということになります。

簡単に “修正できる” 世代

話を戻しましょう。 PC 世代は、漢字の書き取りが苦手で、選択することしかできない。よって、選択ミスから誤字脱字が大量に発生する ・・・ 表面的には、その通りだと思います。しかし、問題の本質はそんなことではない。誤字脱字がたくさんあっても、修正すればいい。しかし、最近の若い連中は、誤字脱字がたくさんあっても、修正しようとしない。そのことこそが、問題なのです。
これに対する私の回答、というか仮説は次の通りです。


「最近の若い連中が、誤字脱字がたくさんあっても修正しようとしない理由は、『いつでも修正できると考えているから ! 』」 つまり、仮に間違えたとしても、容易に修正できる環境で育ってきたので、修正という行為を甘く見ているのではないか !  ということです。


当たり前のことですが、ボールペンで書いた文字を修正するのは一苦労です。修正液を使えればいいですが、正式な文書の場合は、再度全文を書き換えなければいけません。一方、PCで作成した文書を修正するのは、本当に楽チンではありませんか !
文書の修正だけではありません。インターネットでショッピングをした場合でも、買った後でキャンセルするのは非常にたやすい。一方、リアルな店舗で買い物をして、「なかったことにしてくれ ! 」などと言うのは、かなりの度胸が必要です。


私の仮説が正しいとすれば、若手に対しても、もう少し寛容になれるような気がします。仕事をする上での最強のツールである PC が、われわれの時代よりも、修正するという行為を容易にしているわけで、いきおい、仕事のやり方も変わっていいのかな、と・・・ そこに目くじらを立てる必要もないように思います。

 

1 つ若手に苦言を呈するとすれば、PC に頼り過ぎることで、処理があまりにも簡単になりすぎるあまり、道理を理解する妨げになっていることが挙げられます。また、処理が断片的になりがちで全体感が見にくい。なぜ、この作業をするのか ? 自分の作業はどんな意味を持つのか ? もっといい方法はないのか ? 常に、自分の仕事に疑問を投げかける姿勢は、PC上の作業からは生まれてきにくいように思います。PC は、与えられた作業を決められた枠組みの中で処理するには絶好のツールですが、それを変更するインセンティブが生まれにくいことについては、肝に銘じるべきでしょう。


さて、以上が前回のコラムで述べた、【最近の若手が、細部をおろそかにする傾向にある理由】の 1 つである、「細部を重視しなくても、適当に何とかなる(つまり、修正できる)環境で育ってきたから」 の説明です。みなさんは、いかがでしょうか ?


「タカシさん ! ちょっと、見てもらえますか ? 」
資料の修正を指示していた若手スタッフから、連絡が入りました。
「今日はもう遅いんで ・・・ ちょっと、全体感だけ見てもらえますか ? 」
! ! ! ぬぬぬーーっ ! ! ! 「全体感だけ」 って、なんやそれ! なんで、全部修正せんのやーーーーーーーーーーーっ ! ハァハァハァ・・・


・・・ ということで、コラムの方も一件落着で終えようと思ったのですが、そうもいかないようです。【最近の若手が、細部をおろそかにする傾向にある理由】の残り、「取り組み志向として、細部よりも、全体感を重視しているから」 については、次回お話したいと思います。
うーーむ、3 回ものになってしまった。・・・んったく、最近の若い連中は ・・・ おっと、いけね!
(次回続く)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

合わせて読みたい

---