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タカシの外資系物語

Derail ? , or Not ? ( その 1 )2009.08.11

A くんが心配な理由

「 A くんなんだけど、最近、なんか元気なさそうじゃん・・・ 大丈夫 ? 辞めたりしないかな ? 」

先日のこと、私はあるプロジェクトの PM (プロジェクト・マネージャー)である B 氏に、私のチームに所属している A くんの様子について確認してみました。


B氏 「 A くんですか ? うーーん、そう言われてみれば、元気ないですけど・・・ でも、みんな忙しくて大変だから、特に A くんがどうってわけじゃないですけどね。どうして、 A くんに注目したんですか ? 」
私 「う、うん・・・ ちょっと気になってね・・・」
確かに、プロジェクトが佳境に入っている場合、メンバーは例外なく忙しいので、そういう意味ではみんな元気がない。そんな中で、私はなぜ A くんに注目したのか ?
私 「いや、大丈夫そうならいいんだけど、ね・・・」
私が A くんに注目した理由、それは A くんが、あるリストに 「リストアップ」 されていたからなんです。


わが社では毎年、全社員を対象に、ある調査が実施されます。調査は、質問形式で 100 問程度。その中に、「現在の仕事に満足しているか ? 」 「ここ数年の間に、転職する意思はあるか ? 」 などの項目があり、もしかしたら辞めそうな社員、つまり「転職の予備軍」を抽出する機能があるのです。例えば、

・ 「現在の仕事に満足しているか ? 」 → 「全く満足していない」
・ 「ここ数年の間に、転職する意思はあるか ? 」 → 「 2 年以内に転職したい」

といった回答をした社員は、そのリストに載り、管理しているマネージャーに報告されることになっています。わが社では、そのリストを、「Derailment List」 と呼んでいます。

“ Derail ” とは?

「Derail」 というのは、「脱線」を意味します。日本人はあまり使わない言葉ですが、アメリカでは、会社を退職したりする場合に、よく使われるようです。
(NEWSWEEK 2009/8/5号の 『オバマに学ぶ英語術』 にて、この「Derail」という言葉が取り上げられています。オバマ大統領など英語スピーチの達人は、「Disturb」 (妨げる、計画を狂わせる)の代わりに、「Derail」を使うとのこと。脱線した列車がいずれ復旧するように、事態の進展が一時的には中断しているものの、最終的なゴールは忘れていないというメッセージが込められているようです。ま、本人の視点で見れば、退職・転職はステップアップの一環なので、そういう言い方もできるんでしょうが、上司や会社の視点では、なかなかそうも言えないわけで・・・ 何とも、アメリカ的な表現のように思います)


さて、私がとりわけ A くんに注目したのは、最新の 「Derailment List」 に A くんがリストアップされていたからに他なりません。もちろん、リストアップされたからといって、全員が辞めるわけではない。そもそも、本当に辞めようと思っているやつは、バカ正直に調査に回答するとも思えないので。
しかし一方では、辞めそうなやつは 「潜在的に」 辞める素振りを見せることも確かでして、私の経験でも、退職者の多くは、事前に 「Derailment List」 にリストアップされていた連中が大半です。
ということで、 A くんが心配になった私は、さりげなく A くん本人と話してみることにしました。


私 「お、 A じゃん ! 最近どう ? (全然、さりげなくないし・・・)」
Aくん 「あぁ、タカシさん。 どうって言われても・・・ 別に、いつもと変わりませんけど・・・」
私 「そっか、じゃいいや」
それで終わりか、おいおい! 話下手か、わしはーーーーーーーっ ! (T-T)


A くんが本当に辞めようと思っているのか、単に疲れているだけなのか・・・ が、仮に辞めようと考えているとして、その気持ちは痛いほどわかる。かく言う私とて、数年前まで (実は今も ! )、「会社なんて、すぐにでも辞めてやりゃー ! どりゃー ! 」 と思っていましたから。

『絶対辞めないリスト』 って、何 ?

先日、銀行員時代の同期と、久しぶりに飲んでいました。私は、銀行 (日系) → コンサル (外資) → コンサル (外資) =今の会社 と転職しており、銀行を退職したのは12年前ですので、同期と会うのもそれ以来です。
しばらく話し込んでいると、話題が 「会社を辞める・辞めない」 に移っていきました。


同期X 「それにしても、タカシはうまく “逃げた” よなぁ・・・」


銀行業界だけなのかもしれませんが、転職者に対して、“逃げた” という言葉がよく使われます。「俺たちは銀行に残って頑張ったのに、お前は辞めやがって。うまく “逃げた” な・・・」 ということでしょうか。“逃げた”と言われることについては、かなり “カチン” ときているのですが、私はこういう手合いには反論しないようにしています。銀行に残った彼らが大変だったことは事実なわけで、そのことに対しては、一定の敬意を感じているのも事実ですから。


私 「“逃げた” からって、そんなに素敵な世界があったわけではないんだけど、ね・・・」
同期Y 「ま、タカシの場合は、同期の中でもかなり早い段階で辞めるって、噂立ってたもんなぁ・・・」
そ、そうなのか・・・ 全然、知らんかった・・・ (T-T)
私 「で、どうよ ? 将来的には、銀行辞めようとか考えてんの ? 」
同期X 「ま、そりゃね。でも、俺は営業一筋で、タカシみたいに IT のスキルとかないから、厳しいよね、実際・・・ 一生、このままかなぁ・・・ (T-T)」
私 「ふーーん、そっか・・・ Y はどうなの ? 」
同期Y 「ん ? 」
同期X 「あれ ? タカシ、お前知らないの ? Yは絶対辞めないんだよ ! 」
私 「絶対、って・・・ なんでそんなこと言い切れるんだよ ? 」
同期X 「Yは、入社時から 『絶対辞めないリスト』 に入ってるんだよ。そんなことも知らないのか、能天気なやつだなぁ・・・」


??? 『Derailment List』 ならぬ、『絶対辞めないリスト』 って、なんじゃそりゃ ?

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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