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タカシの外資系物語

上司へのブリーフィング ( その 1 )2009.04.07

ブリーフィングしよう!

Thomas 「mmm・・・」 (ドキドキ・・・)  「mmmmmm・・・」 (何か、問題あんのかぁ ? (T-T))
「OK, it’s good ! (よし、わかった。これでいい!)」  ホッ!


私は今、ボスの Thomas に、あるクライアントに関する説明をしています。実は、数日後に実施されるクライアントとの打ち合わせで、「 Thomas からのコメント」という時間が設定されており、その「予習」をさせているというわけ。数枚のパワーポイント資料を作ったりして、担当者の私としては、かなりの負担です。ここまで時間をかけさせておいて、アレコレ文句言われたりなんかしますと、思わず「自分で作れやーーっ!」と言いたくなるのですが、私もサラリーマン、そうもいきません。いつもなら数十個の修正を言い渡されるところですが、今回はほとんど修正なし。ま、良しとしましょうかね。


外資系企業では、上司に対してこれまでの経緯や背景を説明することを、「 briefing (ブリーフィング)」と言います。役員クラスが顧客を訪問するに際しては、必ずブリーフィングが設定されますので、その回数も半端ではありません。私自身、自分の仕事の何割かはブリーフィングのために時間を使っているのではないか・・・というほど、労力を使っているように思います。


みなさんも、上司に対してブリーフィングをされたことがあると思います。これまでの経緯などをほとんど理解していない上司に話をさせなければならない、気の利いたコメントを言わせなければならない・・・ なんてことで苦労された経験があるんじゃないでしょうか? 他人に話をさせるのって、非常に神経を使うし、時間もかかりますよね。


さて、私はこれまで、日系および外資系企業において、数え切れないほどの「ブリーフィング」を実施してきました。その経験を通じて、私はあることに気付いたのです。それは、ブリーフィングを受ける側 (=上司) の反応・態度には、大きく分けて2つの類型があるということです。以下で説明いたしましょう。

パターン A 「私のセリフを考えて!」

まずは、よくありがちなブリーフィングのパターンから。

 

私 「・・・というわけで、クライアント A 社とは、情報システム整備プロジェクトを通じて 3 年以上のお付き合いをさせていただいております」
上司 「・・・で ? 」
私 「は ? だから、3 年以上のお付き合いを・・・」
上司 「そんなことはわかっておる ! で、私は何を言えばいいのか ? 」
私 「ですから、まずは、これまでのお付き合いに対しての “お礼” を言っていただいて・・・」
上司 「それで ? 」
私 「うーーん、基本的には、お礼を言っていただければ、それで OK ですが・・・」
上司 「よし、だいたいわかった。ありがとう!」
私 「・・・ (はぁ ? お礼ぐらい、だれでもするやろーーっ ! プロジェクトの中身はどうでもええんかーーっ ! ブリーフィングの意味、ないやんけーーっ ! )」
お礼しか言わない(というか、そもそもお礼しか言うつもりがない!)ので、ブリーフィングの意味をなしていません。「儀式」みたいなもんです。


上記パターンの派生系として、こんなのもあります。


上司 「どこかのタイミングで気の利いたことが言えるように、俺のコメントを考えてくれ ! 」
お礼だけ上司よりはマシですが、実はこれもタチが悪い。そもそも「コメントを言う」ということは、背景や状況を理解した上で、自分なりの意見を持っているからこそ言えるわけです。背景も理解せず、自分の意見もない人にコメントを言わせてしまうと、逆に相手から質問が来た場合に答えられなくて困るのです。結果、相手の質問に対して、コメントを発した当事者である上司ではない、担当者が割って入って答えたりすると、上司はアホ丸出しになってしまいます。

パターン B 「私のセリフに合わせなさい ! 」

では、次のパターンを見てみましょう。


私 「・・・クライアント A 社とは、 3 年以上のお付き合いをさせていただいております」
上司 「よし、わかった ! で、当日のアジェンダ (式次第、検討項目) はどうなっているんだ ? 」
私 「これです。ボスにご挨拶いただいた後で、私が来期以降のプロジェクトの進め方を説明するという段取りです。これが、私の説明スライドです・・・」
上司 「うーむ・・・ 3 ページ目と 5 ページ目を大幅に修正しよう !」
私 「な、なぜですか ? 」
上司 「私がコメントしようとしていることに合わないからだ」
私 「・・・ (はぁ ? このスライドは既に客とも握れている(合意できている)んやぞーーっ ! お前のコメントのために、なんで1から作り直さんとならんのやーーーっ ! )」
この手の上司は、自分の主義・主張を持っている分、パターン A の上司に比べると安心感があります。しかし、上記会話にも示されている通り、自分の意見に全てを合わせないと気が済まない人が多いので、周りが振り回される傾向にあります。また、クライアントとの面談で、急に持論をブチ上げてしまい、こちらの準備ができていないために、収拾がつかなくなるケースもありえます。


パターン A と B の上司を比較した場合、どちらがマネージャーとして優秀なのでしょうか ?  一見すると、自分の意見を持っているパターンBの上司の方が優秀な感じがしますが、実際にはそうでもありません。パターンAの上司は、自分の意見を言わないという反面、周りの段取りに合わせて動くことができる、という言い方もできます。どんな状況であっても、部下である担当者の思惑通り、臨機応変に対応できるという意味では、パターン A の上司も評価に値すると思います。もちろん、自分の意見を持ちつつも、状況に応じて臨機応変に対応できる、AとBを折衷したバランス型がベストなのは言うまでもありませんが。


さて、日系と外資では、A と B のどちらが多いのか ? これは、日系はパターン A が多く、外資はパターン B が多い。これは予想通りだと思います。では、どうして外資には、パターン B の上司が多いのか ? 「外国人は自己主張が強いので、自分の意見を押し付けがち」 もちろん、そういう要素もありますが、もっと決定的な理由があるのです。またその理由は、外国人の雄弁さにも大いにつながっているといえるものです。これについては、次回お話いたしましょう。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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