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タカシの外資系物語

「おめでとう ! 」 研修参加が決定 - 待っているものは … ? ( その 1 )2006.07.25

Congratulations! で始まるメール

「Congratulations!」


先日、この言葉で始まるメールが、私のもとに届きました。私の経験上、「Congratulations!」で始まるメールには、以下の 3 種類があると思っています。


1) 何かの表彰とか入選とか、本当に「おめでとう ! 」と言われているケース


2) 非常に面倒な仕事や役割を任せられることになったのだが、「こんな名誉なことはないよ、おめでとう ! 」と言うことで、うまい具合にごまかされているケース


3) 単なるジャンク・メールやウィルス


私 「どれどれ、今回はどのケースの "Congratulations!" だろうね、と …


Congratulations!


You have been selected to become part of a community critical to XX consulting's future by participating in the “Deal Maker program”. XX consulting is making this significant investment in you because the management team believes you are well qualified. The education you will receive is targeted at helping you to develop higher levels of deal making skills, such that you and XX consulting will benefit by your closing big deals…


( 抄訳 = かなり意訳 ) おめでとうございます ! あなたは、 XX コンサルティングの将来を担うべく、重要な取り組みとしての、「Deal Maker プログラム」に参加することが許されました。 XX コンサルティングは、この研修に多額の投資をしています。なので、大きなDeal ( = 案件 ) が取れるように、頑張ってね ! )


… 何やら、研修への参加要請のようです。「Deal Maker プログラム」、社内でも聞きなれない研修なのですが、一体どのような主旨のものなのでしょう。私は、ボスの Thomas に、この研修について尋ねてみました。


私 「Thomas, what is “Deal Maker program” ? I received invitation mail from training section …」


Thomas 「ん ? あぁ、Deal Maker プログラムのことだな。去年から始まったんだよ。 10 億円以上の大きな案件を獲得するための、特別なノウハウを教えてくれるっていう研修だよ」


私 「そうなんだ。で、なんで私が選ばれたのでしょうね ? 」


Thomas 「お前、いつも Big Deal、Big Dealって言ってたろ ? だったら、この研修に参加して、是非 Big Deal 獲得してもらおうかな、って思ってさ。自信あるんだろ ? 」


私 「そんなもん、やってみないとわかんないし … 」


Thomas 「いや ! そうはいかないんだよ。この研修に参加するからには、半年以内に何らかのBig Deal を獲得することが条件になってんだよ。研修要領を、よく見てみな ! 」


私 「ええっ !? 」

研修参加の条件

ちょっと研修に参加したぐらいで、 10 億円規模の Big Deal 獲得を約束させられたのではたまりません。私は急いで、研修の参加要領を確認してみました。すると、以下のような記載がありました。


■ 研修後半年間の間、 Deal の進捗状況について、 US 本社が直接 Trace Back します ( つまり、 US 本社への報告義務があるということ )


■ 昨年の実績では、この研修の卒業生 1 人あたり、 12 億円の Big Deal を獲得できたという実績を上げています


… こりゃ、まいったな。 Thomas にはめられた … 私は正直、そう思いました。確かに、「研修参加者は、受講後半年以内に、 Big Deal を獲得できなければクビ ! 」と書かれていたわけではありません。しかし、「 Trace Back される」「昨年は実績を上げた」 … この2つの記述が意味するのは、「昨年と同様に、今年もできるはず。できないヤツは、ダメなやつ ! 」ということを意味しているのです。外資系企業というのは、「昨年うまくいったことは今年もうまくいく」と考えて投資をしていますから、それが達成できないなら、投資された人材の「質」が悪かったと考えるのが筋なのです。


つまり、この研修を受講したからには、それなりの成果を上げないと、評価が低くなることを意味しています。仮に、「 Big Deal 獲得の義務を負わされるぐらいなら、オレは研修に参加したくない」と言ったとしましょう。そうすると、さらに低い評価になるばかりか、これ以降、仕事を与えてもらえない可能性もあります。要は、選ばれたからには断ることは許されず、頑張ってやりきるしか道はないということです。


「トホホ … ま、いいや。スキルアップにもつながるし、前向きに考えよっと ! 」 


研修そのものは、非常に魅力的な内容でした。これから 4 ヶ月の間、中国と東南アジアのある都市で、 3 回の研修 ( 各 1 週間 ) を受けます。うち 1 回は、ある有名な経営大学院の MBA コースを 1 週間に濃縮したもののようです。研修費用は、 1 人あたり数百万とのこと。何らかの成果を出さなきゃ、本当にクビになりそうですな、こりゃ …

Class 1 / 中国の空港にて

「ふー、着いたぞ ! 」


私は、 “Deal Maker program” の Class 1 に参加するために、中国のある都市にやってきました。最近、中国の発展がマスコミでも伝えられていましたが、それは想像以上のものです。近代的な国際空港に、摩天楼のビル群。もしかしたら、東京に匹敵するぐらいの都市機能を備えているかもしれないと思えてきます。


「よし、まずはホテルに行かないとな … 」


実は私、中国に来るのは初めてでした。「地球の歩き方」などのガイド本を買うのも忘れ、かなり余裕をかましてやってきたのはいいのですが、ホテルにどうやって行けばいいのかわかりません。


私 「○○ホテルなんだけどな … あ、あのバスの運転手に聞いてみよう … Excuse me, this bus is going to ○○ hotel? 」


バスの運転手 「 … 」


どうも、英語が通じないようです。仕方がないので、私は「○○ホテル行き」と書いたバスを、何十とあるバスの中から探し出すことにしました。


え ? どうしてタクシーに乗らないのかって ? いや、確かにタクシーに乗ってしまえばいいのでしょうが、実は私、出張先でのタクシーにはろくな思い出がないのです。初めてロンドンに行ったときには、だまされて「白タク」に乗ってしまいました。高くても、目的地まで連れてってくれればよかったのですが、その白タク運転手、なんと道に迷ってしまい、 2 人で 2 時間ぐらいロンドンの町をさまよったことがあります。また、NY に行ったときなどは、 JFK 空港からマンハッタンまでタクシーに乗ったのはいいのですが、その運転手、途中でガソリンスタンドに寄るは、スーパーで買い物はするはと、傍若無人な振る舞い。もちろん、タクシーのメーターは下げられたままでした。てなわけで、私は出張先では極力タクシーは使わずに、公共の交通機関を使うようにしています。その方が、その国のことがよくわかるし、楽しいですからね。


「お、これだな … 」


10 分ほどバスを探していくと、「○○ホテル」と書いたバスを見つけました。値段は、 30 元 ( 500 円ぐらい ) でした。


「よし、何とかホテルには行けそうだね。ホッ … 」


バスが出発し、高速道路に差し掛かった頃。私の隣にいた中国人の女性が近づいてきて、次のように言いました。


女性 「You... from Japan?」


私 「Uh, Yes」


女性 「○○consulting?」


私 「Yes」


女性 「Oh! Congratulations! welcome to “Deal Maker program”」

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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